今回のつどい会奈良散策は、ちょっぴり勉強しながら、久しぶりの再会を喜びあいながら、秋たけなわの磯城の郷をめぐりました。季節は霜月の終りをむかえていて、この郷には、静寂の空間に冷気が音もなく流れ、其処此所に点在する田畑からは、穏やかに稔りの季節を終えようとしている、畝々の重なりからもふとなつかしい、土の温もりと香りが溢れてくるのが実感できたように思いました。平成三十年十一月十七日(土)快晴その日は終日、どこまでも青空が広がり、小春日和の優しい日差しが我々一行を包んでくれ、磯城の郷は遠い古代から現代に続く、ピカピカのシルクロードが展けていました。そして遙かに遠い昔に、古代中国とローマが結んだ一本の道につながり、それが夢のように磯城の郷と結ばれるという、サスペンスドラマのワンシーンとオーバーラップしながら、この磯城の郷に生命を托した、「弥生古代人」の力強い脈動が甦ってきているとしか思えず、それは余りにも宏大無辺で、余りにも膨大な古代空間と対峙している私が可愛く見え、「弥生」という、「悠久」の古代空間の無限の迫力に圧倒されるばかりでした。
「磯城」の郷は我が国の考古学史上、「原始古代」と呼ばれる、弥生時代に遡る郷として知られ、その昔には、遺跡面積四二ヘクタール。(坪に換算して)十二万六千坪に及ぶ広大な土地を持ち、近畿地方最大の面積を誇って存在していました。そしてこの郷の名は実に鄙びた、「磯城」という名で親しまれていて、現在の大和の国奈良県磯一城郡田原本町の町内一円に広がり、弥生時代を代表する、「大和大環濠拠点集落遺跡」と命名され、本年、平成三十年四月十七日に、「唐古・鍵遺跡史跡公園」としてオープンしました。古代にカンバックして、田原本町界隈は田原本町界隈は山々に囲まれ、広大な大和盆地の中心地区に位置どり、平安中期までは町の中央を南北に、下つ道(藤原京と平城京を結ぶ宮道)が走り、平安末期、寺川の河川敷(多・八尾)となり、寺川と並進して、国道二十四号と近鉄橿原線が走っていて、此所は近昔を問わず交通の要所となって栄え、寺川の今里は、世間では特に、「大和の大坂」(今の大阪)と言われ、「米」の集散拠点となり、富を蓄え繁栄を極めていました。古代から磯城と呼ばれたこの辺りに、「大和湖」という淡水湖があり、その為か水回りも良く、湿地地帯の地形から「乢」と呼ばれ、「本」は「所」を表す字から言われているので、現在の「田原本」という地名の由来になっているそうです。大和の地名は、その謂谣来を手操るとき、何とも言えない、素朴で温かい、そして優しい心がこめられたネーミングであることがわかりました。そして、磯城と呼ばれたこの郷は、この地が肥沃な水濠に恵まれ、稲作農業が発達していたことは当然であり、ところが、その反面には弥生時代には一番困難であったのは、河川の氾濫等によって発生した、稲作への被害や、疫病の流行などによる自然環境の変動で住民が苦しむ事態がおこり、大変だったことが記録されています。また、その苦難を救ったのが「多重環濠」であったことを考えるとき、周辺集落に住む人々の汗と涙の物語がのちの世にまで伝承されたのでした。
時代は移り、大正時代に入ると、弥生時代の遺跡遺物が注目されはじめ、全国的に発掘技術がレベルアップ。昭和に入り十一年、十二年、西暦一九三六年、一九三七年には、「奈良県磯城郡田原本町」、「大字唐古」、「大字鍵」の名が記された遺品が出土。この発掘調査によって、唐古池から、大量の土器、木器、石器、骨や種子などの自然遺物が出土。この成果が、「大和唐古弥生式遺跡の研究」と命名されたのが発表報告に繋がり、一躍有名になりました。
一方では、『メルクマール』(目印、指標)とされ、木製の器具、農具、石包丁、炭化した籾や米の出土は、『弥生時代の稲作農業に生産基盤を置いた社会構成であった』ことがわかり、この発掘調査に依って一層鮮明にインプットされました。唐古・鍵遺跡からの出土品には、石包丁、(稲穂を摘む道具)、また、炭化米、稲束など様々な農機具があり、「磯城の郷」は「米作り」が中心だったことが実証されました。また、唐古・鍵遺跡で、不思議な形で建っている中国風なモニュメントがあり、一説によると、『この楼閣は宗教的な儀礼に使われる建物で、楼閣の屋根の渦巻は縄文式土器と思われ、「太陽の象徴」とも思われる。この装飾から「五穀豊穣」を祈り、「ムラ」の安泰を願う祭祀との関わりがあり、楼閣の手摺に留まっている三羽の鳥は、「瑞の国の豊作の象徴である」と識者は発表しました。平成三十年十一月十七日(土)快晴以上でロマンと感動の旅を終ります。<\br>プロローグとしては未完成ですが、唐古・鍵遺跡の探訪は奥深く、次の機会に書いて見たいと思っています。一緒に旅して下さった「つどい会同志諸君」に厚くお礼申し上げたいと思います。
桑原会長はじめ、長谷川さん、京本さん、森田さん、小生、そして古田さん、本当に有難うございました。