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「生徒会活動を思い出す会」について

文化祭仮設舞台

宝相華会会報誌 第88号に掲載された記事の内容で、写真が別の場所に配置された誤りがありましたので、今回HPにWEB版という形で掲載させていただきました


岡本 章(S.43年卒)

 奈良高校は昨年の四月に、法蓮から朱雀の地の平城校舎に移転した。私が三年生だった昭和四十二年(1967年)には、一条通りに面した旧校舎から新校舎への全面移転が完了し、三学年が揃って学ぶことになったのだが、そのことを思うと感慨深いものがある。
 その当時、私は生徒会活動をしていたのだが、この所ご縁があって、共に生徒会活動に勤しんだ水谷正夫さん、上田哲さんと久しぶりに会う機会があり、色々と話が弾んだ。その中で思いがけない発見だったのは、それぞれにとって、かつての生徒会での活動が重要な経験としてあり、その後の人生にも大きな影響を与えていることだった。多感な時期に、文化祭や体育祭、音楽祭などの行事で、様々な困難を背負いながらも、議論し、知恵を絞って達成した経験、喜びは、やはり掛け替えのないものだったと思われる。そして出来れば、他のメンバーの経験、思い出も聞いてみたいと話していた。
 そんなこともあって、昨年の七月に、「1967―1969奈良高校生徒会活動を思い出す会」を立ち上げた。奈良や東京で直接顔を合わせたり、またリモート会議などで、さらに貴重な経験が語り合われ、活動の輪が広がっていった。その中で皆の記憶に強く残っていたのが、1967年の文化祭開催のことだった。
 先にも書いたように、この年に新校舎の移転が完了したのだが、夏休み前に学校の方から、秋の文化祭中止の方針が告げられた。理由としては、新校舎移転に伴いまだ竣工式が行われていないので、文化祭の展示などで教室を使用することにより、壁や床を傷つけたり汚したりする恐れがあること。また体育館、講堂が完成していないので、多数の生徒が集まれる場所がないことであった。学校側の配慮は分らないこともなかったが、既に準備を進めていた文化クラブや、各クラスからは驚きと不満の声が上った。生徒会としても学校側と粘り強く話し合い、交渉する必要性を感じ、連日多様な角度から熱心に議論を重ねた。その中から対応策として、具体的には、壁の傷みなどは、机を積み上げ幕を張ることで養生し、また大会場も、芝生の中庭に仮設舞台を造り、そこを演芸会場として使用出来ないかという案が出てきた。学校との交渉では、文化祭が生徒にとってどれだけ重要な時間、機会で皆がその開催を切望していること、そしてこの対応策を伝え、話し合いが重ねられた。その中で先生方の理解も得られ、その後新校舎での文化祭の開催が認められることになった。
 この決定は大きく、今回は無理かもしれないと思っていた生徒たちも喜び、一気に盛り上りを見せ、例年以上に充実した文化祭が実現し、成果を挙げた。未熟ではあったが、困難な状況の中で皆で知恵を絞り、息や力を合わせ、限りを尽した生徒会での活動は、やはりそれぞれにとって掛け替えのない経験となったと言える。そんなこともあり、「1967―1969生徒会活動を思い出す会」のメンバーの語り合いの中から、当時の生徒会の活動をエッセイや資料、座談会などで記録に残し、また、それを多面的に捉え直す出版計画が持ち上がり、動き出した。
 そうした時に、昨年の十一月に開催された「宝相華会東京支部総会」で、会の出版計画について話す機会をいただいた。そこで会結成の経過や出版の狙いについて話したが、総会には来賓として、奈良高校の前田校長、宝相華会の瀬川会長なども列席されていて、懇親会でも色々と和やかにお話が出来た。前田校長からは、現在の奈良高校の生徒会役員の諸君が、コロナ禍や新校舎移転といった困難で制限の多い状況の中で、様々に工夫し、行事を再開して、充実した成果を挙げ、活躍されていることを聞き、嬉しく心強く思った。そしてその後、私たちの活動について、「生徒会誌」の巻頭言でも触れていただき、「無から有を創り出すその精神、生徒会活動の礎が半世紀以上の時を越えて、現在の学校行事に脈々と引き継がれている」と、深いご理解で語られていて、大いに励みになった。
 そんなこともあり、現在、現役の奈良高校の生徒会役員諸君と私たちの間で、座談会の計画が進んでいる。祖父と孫くらいの年齢差があるが、五十数年の時を経て、困難な状況で知恵を絞り、超えた者たちが、一つの場で語り合うことは、なかなか無い貴重な機会であり、とても楽しみにしている。そうした中で、奈良高校の「自主創造」の理念や、学校の伝統が浮かび上り、また展開することがあればと考えている。この彼等との座談会も上手くいけば、今度の書籍に収録出来ればと願っている。来年早々には刊行したいと思っているが、その際にはご覧いただければ幸いである。

東京支部総会

文化祭仮設舞台

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